万年筆という筆記具について。
はっきり言ってほかの筆記具とはまったく違う魅力がありますよね。
いちど万年筆の魅力にハマると、もう二度とその沼から抜け出すことはできません。
え、言ってもただの筆記具でしょ?
いえいえ、そんな甘いものではありません。
これはハマってみれば分かります。
かくいう私も万年筆の底なしの魅力にハマり、抜け出せなくなったひとりです。
今回は万年筆そのものの魅力ではなく、万年筆マニアなら間違いなく通る道「紙」について、特に書き味について説明していきたいと思います。
紙なんてそんなに騒ぐほどの違いがあるとは思えない?
そんなことはありません、むしろ万年筆そのもの以上に奥深い魅力があるんです。
万年筆にハマる人が通る道とは
どんな趣味の世界でもそうですが、なにかにハマった人というのはその道を突き進みます。
たとえばジブリにハマった人は、ジブリ作品をすべて見るでしょう。
そして各作品のスタッフや声優について調べ、どんどん蘊蓄をため込んでいきます。
人によってはアニメを見るだけにとどまらずキャラクター商品を集めたりもするでしょう。
多くのジブリファンはこれと似たような行動を取ります。
その行動に違いがあるとすれば「程度」の差くらいのものです。
まずは万年筆本体にハマる
これと同じく、万年筆にハマる人たちもみんな同じような道をたどります。
まずは万年筆本体。
他の筆記具に比べて作りは丁寧ですし高級感もある。
実際に文字を書いてみると・・・鉛筆やボールペンとは似て非なるものだと実感します。
そして別のペンも試してみたくなるんです。
こうしていつの間にか何本も万年筆を保有することになる。
みんな同じです。
1本だけで気が済むはずがないんです。笑
かくいう私もざっと10本ほどの万年筆を持っています。
ペンごとの違い、好みがだんだん明確になっていきます。
そうするとみんな「お気に入り」のブランドのペンを何本も持っていたりするんです。
1本数万円もする万年筆が高いと感じなくなったら、あなたも立派な万年筆マニアです。
次にインクにハマる
万年筆も高いものになると10万円以上するモデルなんてざらにあります。
なかなかそういう高価なモデルを気軽に購入するにはそれなりの勇気と経済力が必要ですが、数万円のモデルだとつい買っちゃうんですよね。
気付くと万年筆だけで何十万円も使っていたりする・・・
そうなるとよほどの経済力が無いとどんどん本数を増やしていくことができなくなっていきます。
で、持っているモデルで遊び始めるんですね。
このモデルはボディがグリーンだから緑色系のインクを入れてみようとか、濃紺の落ち着いたモデルにはブルーブラックのインクを入れてみようとか。
そう、インクにハマっていくんですよ。
さまざまな色のインクを充填しているうちはまだ良いんですが、そのうち「同じ色」のインクを色々と試すようになっていきます。
例えば「黒」
黒インクといってもメーカーによって微妙に黒さが違いますし乾き方も違う。
その「ちょっとした」違いが、書いた文字になんとも言えない抑揚をもたらすんです。
自分の机の引き出しに同じ色のインクが複数あるなら、もうあなたは完全にインクマニアといえます。
そして紙にハマる
持っている万年筆の本数が限られているので、インクで遊ぼうにもそう頻繁にインクを入れ替えて・・・というわけにもいきません。
万年筆マニアが最後にたどり着く場所、それが紙です。
髪質によって万年筆のペン先の動きが驚くほど違うことに気付いたあなたは、自分にとって「書きやすい」紙を探し始めます。
100均で売っているノートでも、メーカーが違えば書き味は全く違います。
また高級なノートだから書きやすいとも限らない。
そしてあなたは「自分にとって究極の書き味」をもとめて「理想のノート探し」の旅に出ることになります。
いちど旅立ったが最後、いつ戻ってこられるかも分からない旅です。
実は私も今まさに究極のノートを探して旅をしている最中なんです。笑
紙質によって書き味の違いは驚くほど大きい
さて、紙といっても私たちがペンで文字や絵を描くのはほとんどがノートですよね?
子供の頃は画用紙とか新聞折込チラシの裏とかに絵を描いたりしましたが、今どき画用紙をわざわざ買ってきてなにかを書くという人は美術系の人以外にはあまりいません。
ということで、ここではノートについて説明していきたいと思います。
ノートといってもメーカーや用途によってさまざまな種類があります。
そしてそうしたノートはそれぞれ異なった紙を採用しているために、書き味が違ってきます。
その違いはちょっとやそっとのものではなく、ビックリするくらい違います。
これは自分でノートの紙を指の腹で撫でてみるだけでも違いを感じることができます。
とてもすべすべした紙もあれば手触りがザラついた紙もあります。
そしてこの違いは万年筆という筆記具にとっては途轍もなく大きな違いなんです。
その違いとはおもに「書き味」と書かれた文字の佇まいに出ます。
佇まいに関しては、書き味以上にその紙の好き嫌いに影響しますが、まずは書き味が自分の好みかどうかが最初の好き嫌いポイントとなります。
髪質がなめらかであればあるほど、書き味は軽く流れるようにペン先が紙の上を滑ります。
インクも十分に紙に乗り、多くの人がこの「なめらか」な書き味を好みます。
一般的に「ぬらぬら」した書き味、なんて表現されますが、万年筆を持つ手にほとんど力が入っていなくても次から次へと文字が書けていく・・・そんな感じです。
このため市販されているノートで「万年筆用」と書かれたものはほとんどがこの「ぬらぬら」系の書き味を実現してくれるノーと言っていいでしょう。
私も最初のうちはこうした「ぬらぬら」した書き味が好きで、多くのノートを試しました。
ですが最近はあまり「ぬらぬら」系のノートは使わなくなりました。
その理由は、書いていてだんだん物足りなくなってきてしまったんですね。
スムーズにいくらで文字が書けてしかも疲れない。
そういう意味では物書きには理想のノートなんでしょうが、私は小説家ではないですし本稿のような記事はPCで書いているためそんなに頻繁に万年筆を使っているわけでもないんです。
ですから書くこと自体を楽しむために万年筆を使っている・・・こうした使い方だと「ぬらぬら」系のノートは物足りなくなるもんです。
まあ、あくまで個人的な好みの問題ですけど。
ぬらぬら系じゃないなら何が好きなのかって?
はい、サリサリ系です。
サリサリ系とは、文字を書いていて適度に抵抗のあるか着心地とでも言いましょうか。
もちろんペン先が紙に引っかかるワケではありませんが、ちょっとだけマットな質感の紙質です。
文字を書いていて「サリサリ」と音がするような感じ・・・
この絶妙な感触が文字を書いていてすごく落ち着くんです。
サリサリ系の紙質を好む万年筆マニアはそんなに多くは無いと思いますが、このサリサリにハマるともうぬらぬらには戻れません。笑
ほとんどの万年筆マニアが気にする裏抜けとは
紙を選ぶ上でぬらぬらだとかサリサリといった書き味ともうひとつ忘れてはいけないポイントがあります。
それは「裏抜け」です。
裏抜けとはペンで紙に文字を書いたとき、裏側にインクが染みてにじんだり透けて見えたりする状態を言います。
これはページに文字を書いていきページをめくったときに裏抜けしていると、その瞬間に戦意喪失してしまいます。
もうこれ以上書き続けるのが嫌になってしまうんですよね。
ですから万年筆マニアは裏抜けしにくい紙を探します。
しかしこの裏抜けはペン先の太さやインクフローの状態などでも違ってくるため善し悪しを決めるのが難しいんです。
たとえばあなたが太字の万年筆で書いたら裏抜けしてしまいNGなノートでも、別の人が細字のペンで書いた場合には問題ないということもよくあります。
ですから一概にこのノートは良いとか良くないとか言うのは難しいんです。
あくまで「あなたにとって」良いか良くないか。
そういう視点でノート選びを進めると良いですよ。
で、万年筆にオススメのノート5選
ではどんなノートが万年筆にオススメなのか。
先ほども言いましたが、同じノートでも人によって良かったり悪かったりしますから、ここで紹介するものはあくまで参考程度に思って頂ければ。
一般的な書き味で幾つか紹介していきますね。
GRAPHILO(グラフィーロ)
万年筆マニアなら誰もが一度は使ったことのあるグラフィーロ。
このノートは「ぬらぬら」の代表格です。
・・・と言われていますが、実際に文字を書いてみると思ったほどぬらぬらしていないことにビックリ。
かなり滑らかな書き心地ではありますが、ぬらぬらと言うよりはサラサラ・・・といった感じの書き心地です。
ペリカンのM800の細字ペンでの感想ですが、このペンは国産ペンと比べるとかなり太字なため、セーター万年筆あたりよりも相当滑らかに書けるものです。
にもかかわらずぬらぬら感があまり強くないのはやはり紙質がぬらぬらよりも若干マット寄りなのかな、と。
個人的にはこのノート、結構好きです。
C.D.NOTEBOOK
このノートのサブタイトルは「紳士なノート」
紙面を指の腹で撫でてみると、なるほどすごく滑らかですね。
これならぬらぬらと書けそう・・・ということで実際に文字を書いてみると、予想以上にぬらぬらしてました。
とにかく滑らかに、ぬらぬらと文字を書きたい方にはイチオシのノートです。
MONOKAKI
このノート、私がさまざまな場面で学んだ内容をまとめるのに使っているものです。
MONOKAKIという名前も良いですよね。笑
書き味はかなりサリサリ寄りです。
とはいうもののサリサリ系の中では滑らか寄りの書き心地だと感じます。
ぬらぬら感を残しつつ、サリサリ感も少し味わいたい・・・そんな欲張りな人にはこのMONOKAKI、オススメできます。
MDノート
最後はMDノート。
これぞサリサリ系、という書き心地のノートです。
MONOKAKIノートよりもさらにマットな質感で、文字を書いているとペンが紙面を滑る際にサリサリと音がします。
かといって嫌な引っかかりや不快感は皆無で、書くという行為を思う存分堪能できるノートと言えます。
私はこのMDノートに日記を付けていますが、書いているときの心持ちはなんとも言えない多幸感があります(あくまで私見ですけどね)
SOLAノート(生産終了)
私がもっとも好きなノートがこちらの「SOLAノート」です。
これはバンクペーパーという、銀行・帳簿向けの紙を採用しています。
書き味はサリサリ、それも硬派なサリサリといった感じです。
まさに「書いている」ということを思いきり意識させてくれる紙です。
かなり太字のペンで文字を書いても裏抜けせず、さすがとしか言いようがありません。
しかしながら、こちらのノートは生産が終了しており入手困難です。
こんなに素晴らしいノートが生産中止になるというのは本当に残念でなりませんが、時代はぬらぬら至上主義の万年筆マニアが席巻しているため、致し方ないのかもしれません。
結局のところ
今回は万年筆で文字を書くことにフォーカスしたときのオススメノートを紹介してきました。
すべての人が満足するノートというものはありません。
ぬらぬら書けることが好きな人にはサリサリ書けるノートなんて悪以外の何者での無いでしょうし、サリサリ派にとってはぬらぬら書けるノートなんてヤワでおもしろくもなんともないと感じることでしょう。
要は趣味の世界ですから、なにが良いとか悪いとかいう話ではありません。
自分でいろいろと試してみて「これぞ最高のノート!」という1冊を見つけていくのって、この上なく楽しい作業だと思いませんか?
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました。