オーディオというと、中高年層のオジ様たちの「金のかかる趣味」ですね。
もちろん若い人でもオーディオに興味を持つ人はいますが、金をかける桁が違います。
スピーカーに何百万円とか、アンプに百万円とかは当たり前の世界ですし、オーディオのために専用のリスニングルームを作ってしまうマニアも少なくありません。
しかしそこまでお金をかけて、どれほど音が良くなるのでしょうか?
はっきり言いますが、大して変わりませんし下手をすれば金をかける前の方が良い音だったりすることもあります。
それなのにマニアたちは次々にオーディオにお金をつぎ込みます。
今回はそんなオーディオという名のオカルト世界について説明します。
オーディオというオカルト世界
オーディオがオカルトってどういう意味?
そう思う人もいることでしょうから、まずはオーディオの何がオカルトなのかを説明しますね。
そもそもオーディオとは、CDやLPレコード、デジタル音源などから出てくる音楽を可能な限り忠実に再生するための装置です。
難しい理屈には興味がないでしょうからここでは割愛しますが、オーディオ装置は基本的には以下の3つの機械から成ります。
・入力装置(CDプレーヤーなど)
・信号増幅器(アンプ)
・出力装置(スピーカー)
ここで絶対的なお約束ごとがあるのですが、それが「入力された音を超えた音が出力されることはない」ということ。
当たり前の話ですが、CDの音質が悪ければいくらアンプやスピーカーを良いものにしたところで意味がないです。
またCDをどれだけ忠実に電気信号に変換できるかで、その後の音質は決まってしまうと言うことです。
CDプレーヤーのあとに並ぶアンプやスピーカーというのは、CDプレーヤーから送られてくる電気信号をいかに忠実に再現するかが全てですから。
つまり、オーディオでもっとも重要なのは「入力装置」すなわちCDプレーヤーやレコードプレーヤーの性能と言うことになります。
ここを外してしまうと、アンプにいくら高級なモノを持ってこようとスピーカーに超高級品を持ってこようと何の意味もありません。
まあCDプレーヤーが良くてもアンプやスピーカーが玩具のようなものでは、これはこれで良い音なんて出るはずがありませんが・・・
というわけでオーディオマニアたちはせっせと高級オーディオに大枚をはたくことになるわけです。
ここで問題なのは「高級オーディオを揃えれば本当に音が良くなるのか」ということですが、私の経験上ある程度は良い音になりますが「値段ほどのことはない」です。
もう少し具体的に言えば、CDプレーヤーを3万円のものから30万円のものに替えたからと言って音が10倍良くなるかと言えば、決してそんなに良くなることはありません。
アンプも然り、スピーカーも然り。
1万円の安物小型スピーカーから10万円のスピーカーに替えれば、音の変化はかなり変わります。
もしかすると10倍くらい良くなるかもしれません。
しかし10万円のスピーカーを100万円のものに替えたとしても10倍は良くならない。
なぜなら10万円のスピーカーだってそこそこ良い音がするからです。
それでもマニアたちは、より高級なものへと「飽くなき投資」を続けます。
そして音質が変わったかどうか「微妙」な場合でも「うん、良い音になった」といって満足げに微笑むんです。
で、しばらくするともっと「良い音」にするためにさらなる高級オーディオに触手を伸ばす・・・これを延々と繰り返すワケです。
これが「オーディオはオカルト」と言われる所以です。
オーディオマニアは躊躇しない
オーディオマニアたちは、自分のオーディオ装置から出てくる音が少しでも良くなるならば何も躊躇をしません。
自分の持っているアンプの新モデルがリリースされ、さまざまな改良がなされたと聞けばもう買わないわけにはいかないほど欲しくなります。
そして値段がビックリするくらい高くても、なんとか工面して買うわけです。
で、音が良くなった「気がする」と、もう有頂天。
いやあ、やっぱりニューモデルは良いなぁ、高いだけのことはある・・・
悪いとは言いません、その人が何にどれだけお金を使おうがその人の自由ですから。
しかしマニアたちはこうした「箱物」だけに散財しているわけではありません。
ケーブル類にも多額の投資をします。
ケーブル類とは「電源ケーブル」「相互接続ケーブル」「スピーカーケーブル」などです。
こうしたケーブル類は基本的には銅線や銀線が使われます。
通常、安価なもので数百円程度で買えるものですが、マニア向けの高級ケーブルはなんと、数万円いや数十万円するものも珍しくありません。
もちろん作りはしっかりとしていますしコネクタ類も高そうなものが使われてはいます。
で、問題はその高級ケーブルを使用するとどれほど音が良くなるのか、です。
いいですか?
ケーブルですよ、ケーブル。
確かに電気信号の伝送効率やノイズの乗り具合などに差はあることでしょう。
しかしそれが音質にどれだけ影響するかといえば、微々たるものでしょう。
微々たるどころか「聞いたところで分かるかどうか」というレベルです。
そのために数万円とか数十万円を払う価値が、果たしてあるのでしょうか?
私には甚だ疑問です。
何故それを疑わないのか
私がもっとも疑問に思うのは、何故マニアたちは何も疑わず高級オーディオをホイホイ買ってしまうのかということです。
私は、音楽を聴くための装置選びというのは自動車選びに似ていると思うんです。
自動車も100万円以下の軽自動車から数千万円もする高級外車まで価格はさまざまです。
そして「走る」「目的地に行く」という部分ではどの自動車でも良いわけですから、だったら安い方が良いんじゃないの、となるわけですがそうはならない。
確かに家族で出かけるなら広い方が良いのでワンボックス車を選ぶということはあるでしょう。
これは機能面のニーズであり、走るとか目的地に行くという本来の目的とは少し違った部分で選ぶわけですね。
これも「高い自動車には価格に見合う何かがある」というある種の幻想であったり、自分は自動車本来の目的以外の部分に高額のお金を払う「特別な人間だ」という変な自意識がから来るのではと思います。
自動車の場合は走っている「自動車に乗っている自分」が他人から見られる環境にあるわけで、だからこそ見栄を張って高い自動車を買う気持ちも分からなくはありません。
しかしオーディオというのは多分に「閉ざされた」趣味です。
家の中で一人で楽しむものですから、人からどう思われるか、みたいな部分で高いオーディオ装置を買うわけではありません。
マニアたちは純粋に「少しでも良い音」を手に入れたい、その一心で大枚をはたくんです。
それを強力に後押しするのが「オーディオ雑誌」の存在です。
オーディオ雑誌なんてマニア以外は見ることはないと思いますが、その内容がもの凄いんです。笑
ケーブルを変えたら「音に厚みが増した」とか「輪郭が明確になった」「横方向だけでなく縦方向にも音が拡がるようになった」など、ケーブル交換はすごい効果があるといわんばかりの内容です。
数種類のアンプを試聴比較してあーだのこーだの、数種類のケーブルを交換して音質がどう変化したかだの、このアクセサリーを使うとノイズが激減しただの・・・
そういう記事を読めば、無知なマニアたちは高い金を払ってでも買いたくなってしまいますよね?
だって彼らは純粋に「少しでも良い音が聴きたい」んですから。
でもオーディオ雑誌のこうした比較記事は100%信用できないと言うことには気付いていないのが悲しい。
だってこれらの比較は「AからB」に交換したら音が変化した、というものです。
で、それを評論するオーディオ評論家という人たちは「いま聴いている音はAという製品であり、交換した製品はB」ということを知った上で「音が艶やかになった」とか言っているわけです。
こうした比較には科学的にも何の意味も信用性もありません。
本来、比較する場合にはブラインドテストが基本です。
いま聴いているのがAなのかBなのか、はたまたさらに違う製品なのかを試聴者は知らないことが大前提です。
知らずに聴くから純粋な比較ができるわけで、事前に知っている状態で聴いても正確な評価なんてできるわけがないんです。
試しにこうしたオーディオ評論家という人たちにブラインドテストで試聴比較させてみて、同じ結果が出るか試してみると良いです。
断言しますが絶対に同じ結果にはなりませんよ。
もっと言ってしまえば、違いなんて分からないかもしれない。笑
高級オーディオの世界なんて、その程度の差しかないんですよ。
それを分かった上で大金をつぎ込むのなら、これ以上なにも申しますまい。
しかし私にはこうしたオーディオマニアたちの行動は「怪現象」にしか見えません。
結局のところ
今回はオーディオマニアたちが信じて疑わない「高級オーディオ」の世界について説明してきました。
10万円のアンプを100万円の高級アンプに買い換えるよりも、部屋の中でスピーカーの位置を調整する方がはるかに大きく音質が変化します。
やってみれば分かります、大きく変化しますよ。
これにはお金は一切かかりません、部屋のレイアウト替えだけですから。
お金をかけるだけがオーディオじゃないと思うんですが、そう思わない人たちが住む世界がオーディオマニアの世界なんでしょうね。
そこはやはりオカルト世界なのでは?
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました。